債務整理の費用は?相場の比較や負担を軽くする方法・注意点まで徹底解説

債務整理には4種あります。
「任意整理」「個人再生」「自己破産」「特定調停」となり、手続きにかかる費用相場も異なります。

債務整理を検討しているけれど、費用相場がわからず不安を感じている方もいるでしょう。
本記事では、債務整理にかかる手続きごとの費用相場や内訳を徹底解説します。

また、費用が払えない場合の対策として、分割払いや公的サポート(法テラス)を活用する方法もご紹介。
債務整理に関する不安や疑問を解消できるようサポートします。

目次

債務整理の費用相場は?任意整理・個人再生・自己破産・特定調停の4種を解説

債務整理の費用相場を解説

債務整理にかかる費用は、主に弁護士に支払う着手金と裁判所費用に分かれます。
着手金や裁判所費用、その他の費用を合算した債務整理の費用相場は以下の通りです。

種類任意整理個人再生自己破産
費用相場4~10万円50~70万円同時廃止:30~50万円
少額管財:80万円
管財事件:100~130万円

特定調停については、簡易裁判所にて個人での手続きが可能です。
費用についても債権者1社あたり1,000円程度で、費用相場が低いのが特徴。

しかし、手続きが思うように進まず、債権者との交渉が不成立になる可能性も高いんです。
本記事では「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種を中心に解説していきます。

任意整理の費用相場は4~10万円

任意整理の費用相場は4~10万円です。
費用の内訳は主に着手金と裁判所費用ですが、任意整理の場合は減額報酬が発生します。

それぞれの費用相場は以下の通りです。

費用項目費用の相場
着手金1社あたり3~5万円
報酬金1社あたり3~5万円
減額報酬減額分の10%

任意整理は裁判所を介さず債権者と和解交渉で手続きを進めるため、費用が抑えられます。
しかし、任意整理の場合でも裁判をしないわけではありません。

和解が長期にわたり成立しない場合など…
債権者から訴訟を起こされ、裁判費用が追加で必要となる可能性があります。

個人再生の費用相場は50~70万円

個人再生の費用相場は50~70万円です。
内訳は着手金や報酬(弁護士や司法書士に支払う費用)のほか、裁判所費用も含まれます。

裁判所へ支払う費用は、収入印紙代や官報掲載費用など。
金額は裁判所によって異なります。

個人再生にかかる費用の内訳を以下の表にまとめました。

費用項目費用の相場
着手金1社あたり20~30万円
報酬金1社あたり20~30万円
収入印紙代1万円
官報掲載費用1万3千円
郵便切手代2千円
個人再生委員への報酬(予納金)15~25万円

個人再生の場合、裁判所費用が20万円、着手金と報酬金を合わせた弁護士費用が20~50万円程です。

個人再生では、申立人との面談や、手続きに関する調査・確認をします。
その際、裁判所から個人再生委員が選任されることがありますが…
選任されない場合は、個人再生委員への報酬は必要ありません

なお、弁護士が代理する方法以外の申立てや東京地方裁判所では、原則として個人再生委員が選任されます。

自己破産の費用相場は30~130万円

自己破産には「同時廃止」「管財事件」「少額管財事件」の3つの手続きがあり、それぞれ費用が異なります。

どの手続きになるかは裁判所が判断するため、希望の方法を選ぶことはできません
大まかな目安は以下の通りです。

同時廃止・管財事件の判断基準
  • 同時廃止…財産が20万円以下の人
  • 少額管財事件…弁護士に依頼しており、ある程度の財産がある人
  • 管財事件…その他の人

いずれの場合も、弁護士や司法書士に支払う費用のほかに、裁判所費用が必要です。
それぞれにかかる費用相場の内訳について、さらに詳しく解説していきます。

同時廃止の費用相場は30万円程度

借金の理由に問題がなく、一定以上の財産が残されていない場合の自己破産を「同時廃止」と言います。

同時廃止の費用相場は30万円程度。
自己破産の手続きの中で、最も費用を安く抑えられます。

対象は財産が20万円以下の人。
債権者への分配を行う財産もないため、破産管財人を選任する必要がありません。
そのため、手続き期間も4ヵ月程度と短く済みます。

同時廃止の費用相場と内訳は以下の通りです。

弁護士や司法書士に支払う費用の種類費用の相場
着手金20~30万円
報酬金0~20万円
裁判所に支払う費用の種類費用の相場
収入印紙代1,500円
官報掲載費用1万5千円~2万円
郵便切手代3千円

事務所によっては、同時廃止に関して他の自己破産手続きより安めに設定している場合も。
また、破産管財人に支払う引継予納金が不要なため、裁判所に支払う費用も安く済みます。

管財事件の費用相場は50~80万円

管財事件は、一定以上の財産があったり、借金の理由に問題があるとみなされた場合に該当します。

管財事件の費用相場は50~80万円。
自己破産の中で最も高額な手続きです。

対象は財産が20万円を超える人。
他にも以下のような場合は管財事件になることがあります。

管財事件になるケース
  • 弁護士に依頼していない場合
  • 少額管財を運用していない裁判所を介する場合
  • 浪費やギャンブルで多額の借金をしている場合
  • 裁判所や破産管財人の調査に協力しない場合

管財事件では裁判所によって破産管財人が選任されます。
破産管財人は、破産者の財産を調査・換価し、債権者に配当。
破産管財人による調査や換価の結果、債権者に弁済や配当するほどの財産が無ければ、手続きは終了です。

一方で、財産の種類が多い場合は、手続きに1年程かかることもあります。
管財事件の費用の内訳と相場は以下の通りです。

弁護士や司法書士に支払う費用の種類費用の相場
着手金20~30万円
報酬金20~30万円
裁判所に支払う費用の種類費用の相場
収入印紙代1,500円
官報掲載費用1万5千円~2万円
郵便切手代3千円
引継予納金20万円~

弁護士(司法書士)事務所では管財事件の場合、同時廃止より高めの料金設定をしていることがあります。

また、裁判所に支払う費用も同時廃止と異なり、破産管財人への報酬となる引継予納金は最低20万円
多い時では40万円や50万円必要なこともあります。

少額管財事件の費用相場は30~50万円

少額管財事件の費用相場は30~50万円。
同時廃止よりは高いものの、管財事件と比べると大幅に負担を軽減できます。

少額管財の対象は財産が20万円を超える人です。
手続きを簡素化して引継予納金を抑え、短期間で破産を完了させられる方法となっています。

ただし、少額管財の運用は裁判所によって異なり、少額管財を設けていない裁判所もあるので注意が必要。

また、少額管財は弁護士に依頼していることが前提となります。
少額管財の費用の内訳と相場は以下の通りです。

弁護士や司法書士に支払う費用の種類費用の相場
着手金20~30万円
報酬金20~30万円
裁判所に支払う費用の種類費用の相場
収入印紙代1,500円
官報掲載費用1万5千円~2万円
郵便切手代3千円

管財事件との大きな違いは、引継予納金が原則20万円とされていること。
場合によっては管財事件の半額程の費用で自己破産を完了できることもあり、非常に助かります。

特定調停の費用相場はおおよそ1,000円程度

特定調停の費用相場は、債権者1社あたりおおよそ1,000円程度です。
手続きは簡易裁判所で行い、本人が申し立てを進めることも可能。
他の債務整理と比べて非常に安価で済むのが特徴です。

それぞれの費用相場は以下の通りとなります。

費用項目費用の相場
申立手数料1社あたり500円(収入印紙)
予納郵便切手費用1社あたり500円程度(切手代)

特定調停では、申立人が裁判所に出向き、調停委員の仲介のもと債権者と返済条件を話し合います。
合意が成立して調書に記載されれば、確定判決と同等の効力が生じ、返済義務が法的に確定。

裁判所への出頭はおおよそ2回程度で済むため、時間や精神的負担も少ないのが特徴です。
また、非公開の場で話し合いが行われるため、外部に知られる心配もほとんどありません。

債務整理の費用は上限が定められている

司法書士事務所や弁護士事務所への報酬金額には、上限があります。

弁護士は日本弁護士連合会の「債務整理事件処理の規律を定める規程」。
司法書士は日本司法書士連合会の「債務整理事件における報酬に関する指針」により、報酬の上限が定められています。

弁護士、司法書士、どちらも定められている報酬の上限は同じ割合です。(解決報酬を除く)

費用項目費用の相場
解決報酬弁護士は1社20,000円、司法書士は1社50,000円
債務の減額報酬減額分の10%
訴訟によらない過払い金回収報酬回収額の20%
訴訟による過払い金回収報酬回収額の25%

稀に上限を逸脱したり、報酬以外の名目で費用を上乗せしたりする事務所もあるので注意しましょう。

「任意整理しなければよかった」と後悔しないために。費用倒れのリスクとは?

「弁護士に債務整理を依頼したいけれど、かえって費用の方が高くつくのでは…?」と心配する方もいるかもしれません。
たとえば「200万円の借金を整理しても、減額された以上に弁護士費用がかかるのでは」と不安になる方もいるでしょう。

上記のことを「費用倒れ」と言いますが、実際にはほとんど起きないのが現状です。
ここからは、費用倒れのリスクと注意点について詳しく解説していきます。

任意整理では「成果報酬型」が基本

任意整理を弁護士に依頼する場合、費用は以下のように構成されます。

  • 着手金(依頼時にかかる費用)
  • 解決報酬金(和解が成立した場合の費用)
  • 減額報酬(減額に成功した金額の○%)

このうち「減額報酬」は、実際に借金が減った分から支払う形が一般的です。
つまり、「借金が減らないのに報酬だけ発生する」といった事態は原則として起きにくい仕組みになっています。

過剰請求や誇大広告には注意

一方で、近年では「費用が50万円以上かかった」「任意整理でかえって負担が増えた」といったトラブルも報じられています。
中には「借金が必ず減る」といった誤認を与える誇大な広告や、明らかに相場を逸脱した請求を行う事務所も。

こうした被害に遭わないためにも、依頼前には以下の点をしっかり確認しましょう。

  • どの費用が、どのタイミングで発生するか
  • 借金の減額見込みがあるか
  • 見積もりや費用説明が丁寧に行われるか

「費用倒れ」を防ぐために

債務整理に慣れた弁護士事務所では、相談時に費用の見積もりと減額の可能性をセットで提示してくれるのが一般的。
費用と減額のバランスに納得できない場合、契約を強要されることはありません。

ただし、契約後の着手金は返金されないことが多いため、契約前の確認がとても重要です。

債務整理の費用が払えない!負担を減らす7つの方法

債務整理の費用が払えない場合に、負担を減らす方法を7つ紹介します。

債務整理は高額な費用が必要になるため、手続きに踏み切れない方も多いはず。
出来るだけ費用を抑えられる方法を知って、1日も早く借金問題から解放されましょう。

①公的サポートの「法テラス」を利用する

法テラス(正式名称は日本司法支援センター)は、国が設立した法務省所管の法人。
法的トラブル解決のための総合案内所です。

法テラスを介して弁護士や司法書士に依頼をすれば、債務整理の費用を抑えられる可能性があります。
費用の目安はこちらです。

手続きの種類費用項目費用の相場
任意整理(1社)実費10,000円
任意整理(1社)着手金33,000円
自己破産(1~10社)実費23,000円
自己破産(1~10社)着手金132,000円
個人再生(1~10社)実費35,000円
個人再生(1~10社)着手金165,000円

債務整理の費用相場より、法テラスの方が遥かに低い料金設定ですね。
費用負担をできる限り減らしたい方には、現実的で有力な選択肢と言えるでしょう。

また、法テラスが行う業務の一つに「民事法律扶助業務」があります。

民事法律扶助業務とは…

経済的に余裕のない方などが法的トラブルにあった際、無料で法律相談を行い必要に応じて弁護士や司法書士の費用等の立替えを行うこと。

着手金や実費などの費用を用意できない場合でも、法テラスが利用者に代わって費用を負担。
利用者は分割で法テラスに費用を返済することができます。

ただし、法テラスを利用できるのは収入基準と資産基準を満たしている場合のみです。

たとえば単身者の場合…
手取月収額は18万2,000円以下(家賃や住宅ローンを支払っている場合の加算限度額は4万1千円以下)。
有価証券や貯金、預貯金などの資産合計額の基準は180万円以下となります。

対象となるか分からない場合は、法テラス公式HPで要件を満たしているか確認してみましょう。

②司法書士に依頼

司法書士に依頼することで、弁護士よりも費用を抑えられる可能性があります。

司法書士は個人再生や自己破産で代理人になることはできません。
しかし、書類作成裁判所への同行などのサポートが可能です。
これにより、費用を安く抑えることができます。

弁護士よりも扱える業務に限りはありますが、少しでも費用を抑えたい人にとっては有効な手段と言えるでしょう。

ただし、任意整理に関して、司法書士が代行できる手続きは価格が140万円以内のものに限られます。
1社あたり140万円を超える借金がある場合、司法書士には依頼できないため注意しましょう。

③分割で支払う

多くの事務所は、分割払いや後払いに対応しています。
分割払いの場合は6~12回での支払いを提案されることも多々。
まとまったお金が手元に無くても、債務整理を行うことが可能です。

特に、個人再生や自己破産では費用が50万円を超えるケースもあるため、無理せず分割払いの相談をしてみましょう。

しかし、減額後の借金返済と債務整理の費用が重なって、支払いが苦しくなっては意味がありません。
計画的な返済プランを立てることが大切です。

④借入れの返済を一時的に止めてもらう

弁護士または司法書士に依頼後、借入れの返済を一時的に止めることができます。
手続きの着手から完了までの約3カ月間で債務整理に必要な資金を貯めましょう。

受任通知は個人で送ることは出来ず、弁護士や司法書士を通しての依頼となります。

⑤明確かつ安い料金設定がされている事務所へ依頼する

事務所の料金を比較すれば、安く債務整理を行える事務所を見つけられます。

依頼先を選ぶ際には費用も重要です。
しかし「信頼できる事務所か」「アクセスが良いか」といった部分も含めて総合的に判断してください。

事務所選びの際にどこがいいか悩む場合は、以下のポイントをチェック。

事務所選びのポイント
  • 報酬の料金設定が上限を超えていないこと
  • 着手金が相場から大幅に逸脱していないこと
  • 不透明な名目の費用が設定されていないこと

費用の内訳が明確に記載されているか確認しましょう。
着手金や報酬が安く設定されていても、他の名目で費用を上乗せしている事務所もあります。
不透明な費用があるなら問い合わせたり、無料相談の際に確認してください。

債務整理の費用相場を理解し、料金が不明瞭な事務所を避けることが重要です。

⑥過払い金の返還で費用負担を軽減する

過払い金が発生している場合、その返還金を弁護士費用に充てることが可能。
特に、過去に利息制限法を超える金利で借り入れを行っていた場合、払いすぎた利息(過払い金)を返還請求することができます。

以下の条件に該当する方は、過払い金が発生している可能性が高いです。

  • 2006年以前から借入れをしている
  • 返済を長期間続けている(5年以上が目安)
  • 消費者金融やクレジットカードのキャッシングを利用していた

正直、調査や請求には時間がかかる場合もあります。
しかし、過払い金で弁護士費用を相殺できれば、実質的な自己負担は大きく軽減されますよね。
費用が払えないから債務整理を諦める前に、まずは過払い金の確認を行ってみるのがおすすめです。

⑦おまとめローンで毎月の返済額を軽減する

「おまとめローン」も費用負担を抑える方法の一つ。
複数の借入先を一本化し、金利や月々の返済額を引き下げることを目的としたローン商品です。

複数のクレジットカードや消費者金融から借り入れをしていると、 各社ごとに違う返済日や高金利に悩むこともありますよね。

おまとめローンで一社にまとめることで管理がしやすくなり、結果的に返済計画も立てやすくなります。
ただし、下記のような注意点もあるので気をつけましょう。

  • 審査が厳しく、収入や信用情報によっては通らないことがある
  • 返済期間が延びると、結果的に総支払額が増えることがある
  • そもそも借入額が多すぎる場合は、おまとめでは対応できない

おまとめローンは、あくまで債務整理を避けたい場合や、弁護士費用の準備期間を確保したい場合に有効な手段。
すでに返済が難しい状態の方は、無理にローンを組むよりも、早めに債務整理を検討した方が結果的に負担が少ないこともあります。

まずは専門家に相談することがベストです。

債務整理の費用に関するよくある質問3つ

債務整理の費用について、よくある質問をまとめました。

Q1. 債務整理は手続きの途中でもキャンセルできる?

A. 債務整理を途中でやめることは可能ですが、注意が必要です。

以下のようなタイミングであれば、手続きの途中でも債務整理をやめることは可能です。

債務整理をキャンセルできる
  • 委任契約をしていない
  • 委任契約後、手続きや交渉をしている段階

相談や手続きの最中であれば、いつでも契約を解除できます。
ただし、債務整理をやめても「着手金は原則戻ってこない」「ブラックリスト入りは消えない」点に注意しましょう。

また、手続きが以下の段階まで進むと、債務整理をやめることはできません。

債務整理をキャンセルできない
  • 任意整理で和解が成立した
  • 個人再生や自己破産の手続きが決定した

やめるタイミングやリスクを考慮し、慎重に判断しましょう。

Q2. 債務整理は自分で手続きできる?

A. 自分で手続き可能ですが、おすすめはしません。

債務整理は、弁護士や司法書士に依頼せず個人で手続きすることができます。
しかし、手続きには専門的な知識が必要です。

特に個人再生や自己破産は提出書類も多く、不備があれば手続きが通らないリスクも。
任意整理においても、債権者との交渉は専門家に依頼したほうがスムーズに進むケースがほとんどです。

手続きに失敗すると時間もお金も余計にかかる可能性があるため、個人での手続きはおすすめしません。

Q3. 相談するだけでも費用が発生する?

A. 相談だけなら無料のケースが多いです。

事務所によっては何度でも相談無料としていたり、無料で出張相談も対応してくれる場合があります。

無料相談をしたうえで納得できれば委任契約する流れになりますが…
担当者と信頼関係が築けそうになかったり、料金面で不安がある場合は契約を避けましょう。

最初に相談した事務所ですぐに契約を決める必要はありません。
複数の事務所で相談し、安心して任せられる担当者を見つけることが重要です。

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