家賃が払えないとすぐに強制退去になるの?

家賃を滞納するとすぐに退去しなくてはいけないと考えている人が多いですが、一般的に強制退去になる目安は3か月以上支払う意思を見せない場合です。

しかし、滞納を続けるとさまざまな影響が出てしまいますし、精神的にも穏やかではいられません。

この記事では、家賃を滞納した場合の流れや払えない時の対処法をまとめました。

目次

3ヵ月以上家賃を滞納すると強制退去の可能性が高くなる

もし家賃を滞納しても、すぐに強制退去になるわけではありません。

一般的に3つの条件を満たすケースに限り、大家さん側から契約解除や強制退去の通告を行っても良いとされています。

  • 大家と借主の間で信頼関係が崩れている
  • 3か月以上家賃が支払われない
  • 内容証明便を送っても期日までに支払いがない

つまり3か月以上滞納していて、支払いを求める内容証明便が届いたにも関わらず支払う意思を見せない場合にのみ、強制退去となる可能性があるのです。

ただし、3か月までなら滞納しても良いと考えるのは危険です。

定められた支払期日を過ぎると様々な影響が出てしまいますし、連帯保証人や保証会社に迷惑をかけてしまう可能性があります。

家賃を滞納してから強制退去になるまでの一般的な流れ

では実際に家賃滞納から強制退去までを、順を追って見てみましょう。

  1. 支払期日を1日でも過ぎると滞納状態になる
  2. 支払期日の翌日から損害金が発生する
  3. 翌日から1か月後に支払いの催促がくる
  4. 1か月から2か月後に連帯保証人が支払いを催促される
  5. 3か月から6か月後に契約解除の内容証明が届く
  6. 6か月後以降に明け渡し請求訴訟を起こされ強制退去となる

定められた支払期日までに家賃を支払わないとたった1日であっても滞納状態とみなされます。滞納解消のためには未納分の家賃と損害金を同時に支払う必要があります。

連帯保証人に迷惑を掛けたくない人は、支払期限から1か月以内に滞納分を支払う必要があります。

3ヵ月もすると、大家さんや管理会社に契約解除や法的措置を行う権利が生まれます。契約解除通知が内容証明便で届き、裁判の手続きが行われます。

6か月後以降に明け渡し請求訴訟を起こされて、強制退去になります。

期日までに払えないなら大家さんと管理会社に相談すること

何よりもまず始めに大家さん・管理会社に相談することが大切です。

場合によっては分割払いや期日の延期に応じてもらえる可能性があります。

払えないとわかった時点で相談するのが望ましいですが、滞納してしまった場合も以下のことをできる限り早く相談しましょう。

  • 家賃支払いが厳しい理由
  • 支払できる日付

裁判になるようなことは大家さんも望んでいませんので、誠意をもってお願いすれば応じてもらえる可能性は高いです。

何も相談しないまま滞納を1か月以上続けていたり、収入減や病気などの理由なしに遅れる場合は応じてもらえない可能性もあります。

家賃を滞納すると強制退去以外にも様々な影響がある

家賃を支払わずに長期間滞納すると強制退去になってしまうだけでなく、その後の生活に色々な影響があります。

家賃の支払期日を過ぎると早いケースでは翌日から延滞損害金が発生します。

延滞損害金の利率は法律で年14.6%以下と決められていて、その範囲内で大家さんや管理会社が定めています。

利率は賃貸契約書に記載されていますので確認してください。記載されていない場合は法定利率の年5.0%、大家さんが賃貸業を事業にしている場合は年6.0%で計算されます。

延滞損害金(年14.6%の場合)の計算方法

家賃10万円を30日間滞納した場合、100,000円×年14.6%÷365日×30日間=1,200円
家賃7万円を60日間滞納した場合70,000円、70,000円×年14.6%÷365日×60日間=1,680円

また、家賃滞納が3か月以上になると大家さんや管理会社が裁判や強制執行の準備を始めることがあります。

支払う意思もなく退去もしないとなると裁判手続きによる明け渡し請求訴訟をおこされ、貸主側が勝訴すると強制退去となってしまいます。

裁判はお金もかかりますし手間や時間もかかるため、大家さんも積極的に望んでいるわけではありませんが、支払う意思がない悪質なケースだと判断されると法的措置に出ざるを得なくなってしまいます。

家賃の滞納を続けると信用情報に傷が付く

一般的に家賃を60日以上滞納すると信用情報に長期延滞として登録されてしまいます。

すると、支払いをしない人とみなされてしまうため、ローン審査に通らなくなったり利用中のクレジットカードが停止されたりしてしまいます。

また、不動産会社同士の横のつながりがありますので、長期にわたる滞納をした過去のある入居者は要注意として情報が共有される可能性があります。

そのため、新たに賃貸契約を結ぼうとしても断られてしまうケースもあります。

また、保証会社を利用していた場合は滞納した過去をもつ人の申し込みは断られる可能性が高く、別の保証会社を探す必要があります。しかし、信用情報に傷が付いていると保証会社の利用も難しいでしょう。

家賃が払えないときは公的融資制度を確認

家賃が払えそうにない方やすでに滞納してしまっている方は、国の制度で融資してもらえないか確認してみましょう。

住居は生活を維持するうえでもっとも重要なものですので、公的制度が整えられています。

家賃を払えない方がまず確認するべきなのが、住居確保給付金制度です。

失業や廃業などの理由によって家賃が払えない人に国や自治体が原則3か月間の家賃相当額を支給します。

正社員だけでなくパートやフリーランスの人も申請でき、住居を失いそうな人の支援を行っています。

給付が認められた場合、約3週間から4週間程度で自治体から大家さんや管理会社に家賃相当額が納付されます。

滞納期間に入ってしまっても、住宅確保給付金が入る見込みだと説明すれば今すぐ退去を命じられる可能性は低いでしょう。

住居確保給付金の対象要件
  1. 離職・廃業後2年以内である場合。もしくは個人の責任・都合によらず給与等を得る機会が、離職・廃業と同程度まで減少している場合。
  2. 直近の月の世帯収入合計額が、市町村民税の均等割が非課税となる額の1/12(基準額)と、家賃の合計額を超えていないこと
  3. 現在の世帯の預貯金合計額が、各市町村で定める額(基準額の6月分。ただし、100万円を超えない額)を超えていないこと
  4. 求職活動要件としてハローワークへ求職の申込みをするなど、誠実かつ熱心に求職活動を行うこと

以上の条件を満たしている方が住宅確保給付金の対象となります。

引用:住居確保給付金 制度概要|厚生労働省

一定期間家賃を払えない場合は総合支援資金の利用を検討

家賃を払えないなら、総合支援資金の申請を検討しましょう。

総合支援資金は公的制度ですので民間ローンよりも安心して利用できますが、申請には条件があります。

原則3か月分まで生活費を借りることができ、家賃や公共料金滞納分の一時建て替えであれば60万円まで借りられます。

生活を立て直すことを支援する制度ですので、働く意思がないと対象になりません。

総合支援資金の利用条件
  1. 低所得者世帯(市町村民税非課税程度)で、失業や収入の減少などによって生活に困窮している人
  2. 公的な書類などで本人確認が可能な人
  3. 現在住居のある人、または住居確保給付金の申請を行い住居の確保が確実に見込まれる人
  4. 法に基づく自立相談支援事業などによる支援を受けるとともに、社会福祉協議会とハローワークなど関係機関から、継続的な支援を受けることに同意している人
  5. 社会福祉協議会などが貸付け及び支援を行うことにより、自立した生活を営むことが可能となり、償還を見込める人
  6. 他の公的給付または公的な貸付けを受けることができず、生活費をまかなうことができない人

引用:政府広報オンライン

一時的に家賃が払えない場合は緊急小口資金の利用を検討

緊急小口資金は、一時的に生活困難で、10万円以内の給付を生活費に充てることで改善できると認められた人しか利用できません。

緊急小口資金は国の支援制度とはいえ、無利息でお金を借りるわけですから誰でも借りられるわけではありません。

緊急小口資金の対象者は低所得者世帯であることで、収入基準は以下の通りです。

スクロールできます
世帯人員1人2人3人4人5人
平均月額191,000円272,000円335,000円385,000円425,000
緊急小口資金の貸付対象理由
  1. 医療費又は介護費の支払い等臨時の生活費が必要なとき
  2. 火災などの被災によって生活費が必要なとき
  3. 年金、保険、公的給付等の支給開始までに生活費が必要なとき
  4. 転職または一時的な休職による収入減で生活費が必要なとき
  5. 滞納した税金、国民健康保険料、年金保険料の支払いによる支出増により生活費が必要なとき
  6. 公共料金の滞納により日常生活に支障が生じるとき
  7. 自立相談支援機関の継続的な支援を受けながら、就職活動に交通費など経費が必要なとき
  8. 給与などの盗難によって生活費が必要なとき
  9. その他、これらと同等のやむを得ない事由があって、緊急性、必要性が高いと認められるとき(滞納していた家賃の支払い、車検代の支払い等)

引用:生活福祉資金貸付制度要綱

収入と家賃のバランスを見直して滞納をなくそう

滞納してしまった人、支払いが厳しい人は自分の収入と家賃のバランスがとれているか確認することをおすすめします。

もし収入に対して家賃が高すぎる場合は、滞納する前に引っ越しをするのも1つの手です。

引っ越し費用も安くはありませんが、敷金や礼金がかからない物件もありますし、急ぎでなければ更新のタイミングに合わせて引っ越しても良いでしょう。

  • 家賃が収入の3分の1を超えている
  • 過去に何度か家賃を滞納している
  • 使用していない部屋がある

以上のような項目に該当する方は、安い物件への引っ越しを検討してみてください。

家賃の滞納に関する疑問に回答します

敷金を家賃滞納分の支払いに充てられないの?

滞納した分を敷金で支払うことはできません。敷金は基本的に退去時の原状回復費用として使用されます。そのため、部屋を明け渡すまで借り手の都合では使用できません。

家賃を踏み倒して強制退去になったら、もう賃貸住宅には住めないの?

滞納分を支払わなかった不動産会社や関連会社の賃貸住宅を契約することは難しくなりますが、それ以外の不動産会社が管理する物件の契約は可能です。しかし、保証会社がいる場合は信用情報に残るので、連帯保証人を立てなければ審査に通りません。

家賃を滞納しそうだと感じたら必ず早めに大家さんや管理会社に相談しましょう。信用情報に傷が付いたり強制退去になる前に行動することが大切です。分割払いや期限の延期に応じてもらえたら、必ず守るようにしてください。

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